違和感は「成長のきっかけ」!外国人の人材が日本の職場文化で違和感を持つこと2025.11.6
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日本の職場は、礼儀正しさや秩序、責任感の強さで世界的にも高く評価されています。一方で、来日した外国人の労働者や海外の現地採用を経て日本へ赴任してきた人々にとっては、理解しづらいルールや習慣も少なくありません。
ここでは、特に仕事の現場で外国人が「違和感を覚える」日本独特の文化について見ていきます。
「空気を読む」文化と曖昧なコミュニケーション
最も多くの外国人の人材が戸惑うのが、日本の職場に根付いた「空気を読む」文化です。
欧米では意見を率直に述べることが評価されますが、日本ではあえて発言を控えたり、直接的な否定を避けたりする場面が多くあります。上司や取引先が「検討しておきます」と言った場合、実際には「難しい」という意味を含むこともありますが、外国人社員はそれを「前向きな返答」と受け取ってしまうことがあります。
この「察する」コミュニケーションは、長年の人間関係の中で築かれた微妙なニュアンスに依存しています。そのため、文化的背景を共有しない外国人にとっては、まるで見えないルールに従って会話が進んでいるように感じられるのです。
上下関係と「報・連・相」の重圧
日本の企業では上下関係の意識がとても強く、年齢や勤続年数が重視されます。上司に対しては敬語や態度で明確に敬意を示すことが求められます。フラットな職場文化が一般的な国から来た人にとっては、「自由がない」「意見を言いにくい」と感じることも多いようです。
さらに、日本独特の「報・連・相(報告・連絡・相談)」という習慣も、外国人の人材には理解しづらいものです。欧米では「結果を出すこと」が重視されますが、日本では「途中経過を上司と共有する」ことが重要視されます。そのため、外国人社員が「自分の判断で進めた」結果、上司から「なぜ相談しなかったのか」と叱られてしまうケースもあります。
会議の長さと決定の遅さ
次に多く挙げられるのが、「会議が長い」「決定が遅い」という点です。日本の企業では合意形成を大切にするため、関係者全員の意見を聞いて慎重に結論を出す傾向があります。協調性を重んじる姿勢としては美徳ですが、スピードを重視する外国人にとっては「非効率」だと感じられることもあります。
海外では上司が即断即決する場面が多いのに対し、日本では稟議書や承認フローなど、段階的な承認を経てからでないと動けません。こうしたプロセスは「責任を回避するための仕組み」に見えることもあります。
残業と有給休暇の取りづらさ
働き方に関しても、日本の職場は外国人の人材に大きなカルチャーショックを与えます。欧米では「効率よく働いて早く帰る」ことが評価されますが、日本では「長く働くこと=頑張っている証」とみなされる傾向が根強く残っています。上司や同僚がまだ残っているのに自分だけ先に帰ることに罪悪感を覚える外国人も多いです。
また、有給休暇も取りづらい雰囲気があります。「周囲に迷惑をかけないように」と遠慮する文化があり、堂々と休むことに抵抗を感じる人も少なくありません。ヨーロッパでは「休暇を取らない方が不自然」という価値観が一般的なため、日本の働き方を「まるで修行のようだ」と感じる人もいるようです。
チームの調和を優先する文化
日本の職場では、個人の成果よりもチーム全体の調和を重視する傾向があります。「出る杭は打たれる」という言葉のとおり、目立ちすぎる行動よりも協調性が求められます。成果主義の国から来た人にとっては、「頑張っても平等に扱われる」「評価があいまい」と感じることがあります。
この背景には、組織全体で失敗を防ぎ、責任を共有するという日本的な考え方があります。チームで助け合う文化は強みでもありますが、個人の努力が見えにくくなることでモチベーションが下がってしまう場合もあります。
書類文化とハンコ文化の根強さ
デジタル化が進む現代においても、日本の企業では紙の書類や印鑑が多く使われています。契約書や請求書の処理に時間がかかることに、外国人社員は驚くことが多いです。「ハンコを押すために出社する」「FAXがまだ使われている」といった光景は、海外では信じられないものに映ります。
これは単に古い慣習というよりも、「形式を通して信頼を確認する」という文化的背景があるのです。しかし、スピードと合理性を重視する国の人々にとっては、どうしても「手間が多すぎる」と感じられてしまいます。
こうした文化の違いは、時に衝突を生むこともありますが、同時に相互理解のきっかけにもなります。外国人の人材が感じる違和感の多くは、日本の社会が「人と人との信頼関係」を何より大切にして築かれてきた結果といえるでしょう。
外国人の人材が日本の慎重さや協調性を学び、日本の人材が海外のスピード感や主体性を取り入れることで、よりバランスの取れた職場文化が生まれるはずです。グローバル化が進む今、「違和感」は決して悪いものではありません。むしろ、異なる視点が新しい価値を生み出す第一歩なのです。
2040年問題と外国人労働2025.10.21
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15年後の2040年には労働力は1,100万人不足すると言います。いわゆる「2040年問題」ですが、日本の少子高齢化が極限に達し、労働力不足、社会保障制度維持、インフラの老朽化などが深刻化する社会問題です。リクルートワークス研究所の「未来予測2024労働供給制約社会がやってくる」(2023年3月)の次のグラフが2040年までの労働力の推移を詳らかにしています。
2027年から2040年問題は始まる
ストラテジストの永江一石さんは、リクルートワークス研究所のこの報告書を基に次のように指摘しています。
『まず2040年には労働力が1,100万人足りなくなるシミュレーション。社会における労働の供給量(担い手の数)は、今後数年の踊り場を経て2027年頃から急激に減少する局面に入る。2022年に約6,587万人であった労働供給量は、現役世代人口の急減に伴って、2030年には約6337万人、2040年には5,767万人へと減少していく。急激に労働力が減少するのは2027年です』
(引用:「2040年に足りない労働力は1,100万人なのに外国人は不要とかバカなんか」AGORA言論プラットホーム。強調は祐川)
リクルートワークス研究所。2023年3月『未来予測2024労働供給制約社会がやってくる』
紹介した『未来予測2024労働供給制約社会がやってくる』のグラフによると2026年の労働者不足は101.7万人ですが、2027年には192.8万人と労働力不足が激化するのです。2040年問題は2040年の問題ではなくて、現在の喫緊の問題だと言えます。ですから、今から2040年に向けての対策を講じていく必要があるのです。
北海道の状況
先に紹介した『未来予測2024労働供給制約社会がやってくる』によると北海道の2030年の労働需給ギャップは▲18.12万人、不足率6.7%ですが、20,240年の労働力ギャップは▲89.11万人で不足率は31.8%にもなります。北海道の労働需給は2030年に以降に急激に悪化していくとされています。
北海道の企業はこの2030年までの5年間で生産性向上や労働力確保等対策の基本を構築する必要があると言えます。
介護分野の2040年問題
労働者にとって介護業界が他業界に比べて魅力的であれば良いのでしょうが、現状では必ずしもそうとは言えないため、労働市場での競争激化の影響は深刻になるかもしれません。
15年後の2040年の話だと少しピンときませんが、2027年から労働人口が急激に減少するというのは喫緊の課題と思えます。
今でさえ労働者不足なのですが、再来年以降、さらに深刻な人手不足が待ち構えているのです。
『未来予測2024労働供給制約社会がやってくる』では、介護サービス職種は、2030年に21.0万人、2040年に58.0万人の供給不足が見込まれ、2040年の労働需要(229.7万人)に対する不足率は25.3%と推定されています。
リクルートワークス研究所。2023年3月『未来予測2024労働供給制約社会がやってくる』
2040年に介護分野での労働者不足率が25%超ということは、職員が50人必要だけど37人程度しか確保できないということです。
職員が100人必要な施設は75人しか確保できません。約25%の不足率を前提とすれば、規模の大きな施設ほど不足人員が多くなってしまいます。この規模の人員不足に対してICTやAIによる業務の効率化、生産性向上への取組だけで対応できるとは思えません。
生き残りを賭けた外国人労働者の確保=介護現場の国際化
2040年の不足率25%への対応として、単純に考えれば、不足分を「外国人労働者に頼ろう!」ということになるかもしれません。つまり、最低でも介護労働者の25%程度は海外からの労働者で賄う必要がありそうだということでしょう。つまり、2024年問題への基本対策は介護現場の国際化です。
2040年問題への具体的な対応は、まず外国人労働者を確保し、彼女ら・彼らを活かす仕組み作りが大切ですが、より詳細に提示すると最低限、以下のような取組が必要です。
①外国人労働者を確保する
-優秀な人材確保のための独自ルートの開発
-採用基準及び採用条件の整備(宿舎、支援業務ノウハウの蓄積と支援担当者の配置)
②外国人労働者を生かす仕組みをつくる
-業務の簡便化及び外国人労働者でもわかるマニュル策定
-教育体制整備
-コミュニケーションツールとしての「やさしい日本語」導入
-組織の国際化促進のための多文化理解
-相談体制の整備
一般社団法人キクトコは、皆様のこの2040年問題への対策の同伴者として一緒に歩んでいきたいと思います。
一般社団法人キクトコ設立のお知らせ2025.7.31
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2025年4月、これまでのキャリアで何かしら人から相談される仕事をしているメンバーが集い社団法人を設立しました。正式名称はキクトコで、「聞く場所」「聞ける場所」「相談できる場所」をイメージした名前です。
そして、またの名を「教育・就労・介護相談センター」としました。これは、人の人生の初めから終わりの大事な場面でヒントが欲しくなる場面に基づいています。現代はこれまで以上に国際化が進んできているので、そんな視点も大切と考えています。
「教育」〜生まれてからしばらくは色々な物事を教わるメインの時期です。この「教育」はその先の「就労」メインの時期の大きな支えとなっています。そして、さらに先の「介護」が必要な時期を考えることも有意義な人生設計ができることでしょう。
「就労」〜青年期、壮年期の大きなトピックは働くことです。それまでの「教育」が下支えとなり、この「就労」メインの時代ができあがっています。また、青年期、壮年期であっても色々な学びがあります。学校で習ってきた勉強とは違う学びの場面では、色々な発見があるでしょう。そして「介護」メインの時代の準備がスタートしていきます。
「介護」〜青年期、壮年期の次のステージは「介護」が必要になる時期です。 “終わりよければ全てよし”という言葉があるように、人生の終わりに向けて、老年期を有意義にするためにも情報が必要です。「介護」の準備をする場面、その次の「介護」を受ける場面があるでしょう。また、「介護」を受ける側、「介護」をする側の二つの立場もあります。
まとめますと、一般社団法人キクトコは、人生の大事な場面(教育・就労・介護)で直面する「困りごと・悩みごと・情報不足・知識不足」に対する「情報提供・解決方法の提案・答えを見出すサポート」をすることを目的として立ち上がりました。国際化時代の現代において、外国人労働者の活用支援も行います。
個人(当人・当人とその家族)、企業や団体(雇用者・被雇用者)のための情報発信や活動を行います。