欧米で人気の知育系ボードゲームの日本語版「にほんごスクラブル」2026.1.10

Scrabbleは、アメリカで作られたボードゲームで、クロスワードパズルのように縦横に単語(英単語)を作成して得点を競うボードゲームです。アルファベットを組み合わせて単語を繋ぎ合わせて得点を得て競い合います。英語だけではなく、アルファベットを使用するイタリア語、フランス語、スペイン語、ロシア語にも広がり、同等のルールで行うゲームが存在しています。
そんな中、Scrabbleの日本語版のルールを一から作り、にほんごスクラブル協会まで設立した人たちがいるのです。協会の事務局長である出崎崇史(でさきたかふみ)さんにお話を伺いました。

ーまずは、にほんごスクラブルを作った経緯をお聞きしたいです。
出崎崇史さん(下記出崎):はい、いきなり日本語版を制作したというわけではないのです。私は、地下鉄南北線の南平岸駅の近くで学習塾を営んでいるのですが、生徒たちの英語力強化のために英語版のScrabbleを導入していました。ある時、一人の生徒が「日本語でもできるのでは?」と言い出して、家で日本語版を作るならこんなルールだ、と言うものを紙に書いて持ってきたのです。「せっかくだからやってみよう」となって始めたのが元々のきっかけです。
ー元々のScrabbleを知らない日本人も多いと思いますので、英語版、つまりオリジナルのScrabbleのことを少し触れさせてください。学習塾での目的は英語の単語力を増やすという意図でしょうか。
出崎:そうですね。学習塾を立ち上げる前の話ですが、アメリカのカリフォルニア州のサンノゼという都市に語学留学をしたことがあるのです。そこで、語学学校の先生がScrabbleを使って教えてくれて楽しかった思い出があります。それで、自分の塾でも英語版のオリジナルを使いました。
ー生徒さんが日本語版の原型を作って持ってきたという冒頭のエピソードがとてもユニークですね。
出崎:そうなんです。主に小学生に使っていました。それで、ある日のことですが、一人の生徒が、日本語版のScrabbleを作るために、自分で紙にルールを書いて持ってきたのです。実は今でも持って切れくれた紙と私が作った紙のボードが手元に残っています。これです。

ー日本語はアルファベットを使わないので、オリジナルのルールは合わないというところは想像できます。
出崎:はい、おっしゃる通りです。実はルールは何回か変更してきました。英語のScrabbleは、マス目にいろいろな仕掛けがあり、ゲームの展開がドラマチックなのです。逆転劇もあり、見ていて楽しいのです。ところが、最初にやってみた日本語のスクラブルは、平仮名のみを使っていて、また、ボードにも工夫がなかったので、何かが違うという感じでした。
ーなるほど、それで漢字を使うことにしたというわけですね。
出崎:はい、漢字との組み合わせを思いつきました。漢字の同音異義語を使って得点とするというアイディアです。それ以降、同音異義語を使うということは当時から変わっていません。しかし、より展開を面白くするために、ボードや待ち時間の使い方のルールなどをいくつか変更してきましたね。それで、現在のルールに至っています。最近では、待っている時、私たちは「待ちターン」と呼んでいますが、その時はスマホで調べても良いというルールーにしました。あくまでも相手のチームが同音異義語の漢字をホワイトボードに書いている間だけですけどね。
ーボードの進化とはどんな工夫をされたのでしょうか。
出崎:はい、手札のピース、それには平仮名が書かれているのですが、最初は8枚持っています。最初は、その8枚だけを使ってゲームをしていたのですが、現在はボードに「手札プラス1」という場所を設けて、ゲーム中にも動きが出るようになっています。つまり、その「手札プラス1」という場所に自分のカードを置いた側が得をするというシステムです。文字が増えると、日本語の単語を作りやすくなります。

ー進化してきた結果、だんだんルールが洗練されていったのですね。その上で、にほんごスクラブルが優れているな、と思う点を教えてください。
出崎:はい2つあると思っています。1つ目は、紙の国語辞典を使うことです。分厚くて有名な広辞苑に載っている言葉の範囲内というのがルールです。見ている側も、なんなら敵チームも楽しめます。「こんな言葉があるの!?」という発見にワクワクするというものです。インターネットの辞書では味わえない、隣の言葉などを簡単に見ることができるのです。2つ目は、単純に学ぶツールとして優れている点です。語彙力が増強します。私も「こんな言葉があったんだ!」と日本語の奥深さを毎回感じています。そして、漢字が書けるようになるのはもちろんですね。


ーいろいろな場所で楽しめそうな知育ゲームという第一印象でしたが、脳トレの要素も入っているというか、それでいてハラハラドキドキするゲームの面白さもあるというのが素敵です。
出崎:はい、そうなんです。よくぞ聞いてくれました(笑)。小学生や中学生はもちろん、大人も子どもと一緒に遊べます。国語辞典を使うので、子どもは大人ほど漢字の知識がなくても、辞書を引く速さで勝負もできますね。また、日本語を学んでいる外国人にも効果があると思います。実は、出張イベントで札幌の日本語学校に行ってそこの学生さんとやってみたのですが、盛り上がりました。また、お年寄りの集まる高齢者施設のレクリエーションとしても使えると思っています。頭の体操になるのは間違いないですね。
ー逆にゲームを開発してきた側としての目線で、課題はありますか?
出崎:はい、あります。審判が難しいということに尽きます。固有名詞は使ってはいけないというルールがあるのですが、普通名詞との線引きが意外と難しいのです。固有名詞をOKとしてしまうと、どんな言葉でも良くなってしまうのでゲームが成り立たなくなるのです。また、得点の計算も意外と難しいのです。辞書を調べる前にホワイトボードに書くことができた言葉ですが、2文字なら2点の2倍、3文字なら3点の2倍の得点をもらえます。知識の限界を迎えた時、国語辞典を使うわけですが、辞典を見てからは得点が文字数のみの得点になります。詳しくはルールを見ていただけたらわかると思います。

・「こうか」という日本語で、高価と校歌を自力で思い出し、辞書を見て高架を見つけて書いたとする場合、「こうか」は3文字なので基本の得点が3点。辞書を見ないで書くことができたものは2倍となる。高価(3×2=6点)、校歌(3×2=6点)、高架(3点×1=3点)
ー審判が大事というのは何かスポーツと同じような感じですね。
出崎:その通りです。ちょっと話がずれますが、将来の目標としてはスマホのアプリで、にほんごスクラブルができないかな、どこかのゲーム会社が作ってくれないかなと考えています。アプリがあると審判が要らなくなると思っています。
ーさて、協会のこともお聞かせください。
出崎:協会自体を立ち上げたのは新型コロナウィルスの騒動の少し前でした。イベントなどもやっていたのですが、コロナ禍の時代の中で活動が止まってしまいました。現在は、また力を入れていこうと、まさに考えているところです。
ー事務局の代表が出崎さんで、他に代表がいるということですね?
出崎:はい、そうです。代表を私が務めないということには明確な理由があります。元の形とはいえ、初めは生徒が考えたアイディアですし、私としてはサポートする側でありたいと思っています。代表は現役高校生もしくは現役大学生です。現在は小樽商科大学の3年生で4代目の代表です。一年に一度、総会があり、そこでその年の代表を選任します。連続で選任されることもあります。
ー代表が現役の学生というのがとてもユニークに思います。
出崎:はい、にほんごスクラブルを、ゲーム自体以外でも教育の場としたいと思っています。どんなことかと言いますと、海外の大学へ進学する場合、自己アピールの作文がとても重要ですし、最近の日本の大学入試でも同様の自己推薦文が珍しくなくなってきました。にほんごスクラブル協会の代表、副代表は活動を通しての実績や学んだことを書くことができると考えていますし、実際、それで大学受験に合格した塾生もいました。リーダーシップを発揮して、スポンサーを募る活動、出張イベントでにほんごスクラブルというのを普及する活動、準備や手配、実行まで全て学生次第なのです。自分をプロデュースすることも身につけてほしいと願っています。ですので、これからもこの学生が代表で、私が事務局の仕事をしていくという図式は変わらないと思います。ちなみに、私は学習塾を経営していますが、塾の営業や宣伝のために利用することはしたくはありません。あくまでもスポンサーの一つというだけで、独占的にスクラブルを利用していく気はないのです。だからこそ、多くの仲間を増やしていきたいのです。事務局のメンバーを増やして、学生代表の後押しをしてあげたいと思っています。
ー最後にこれまでの主な活動をいくつか教えてください。
出崎:札幌市北区の放課後学童クラブ、東区にある日本語学校、後はドナルド・マクドナルド・ハウスのさっぽろハウスのイベントに出させてもらったこともあります。今後もこのような活動をしていきたいと思っています。

教育業の学習塾を営む一方でボードゲームの協会を設立。しかも、小中学生のほか日本語を学ぶ外国人、高齢者の脳トレにまで応用できます。出崎さんは教育業界の中でも唯一無二の存在ではないでしょうか。